【まとめ】2015 年ベストアルバム
今年出たアルバム(EP含む)から、ベスト20を選出しました。
簡単な紹介文と試聴できるURLも載せているので、もし気になるものがあったら聴いてみてください。
20. Mew「+ -」
[Denmark, Alternative/Rock]
デンマーク産ロックバンドの6thアルバム。
唯一無二の天使のような歌声、優しく甘い浮遊感のあるギターとシンセ。それを支えるのは、デンマークのバンドらしい骨太なドラムとベース。やはりこの組み合わせはMewにしかできないと感じさせられる。以前はギターがもっと全面に出いている曲が多かったが、今作ではシンセの音が分厚くなっていて、ギターは控えめな印象。#9は10分超えで名曲「Comforting Sounds」に通じるものがある大曲。11月の来日公演は素晴らしい演奏でした。
Mew - Satellites (Official Video) - YouTube
19. Obsequiae「Aria of Vernal Tombs」
[US, Melodic Black Metal/Medieval]
アメリカ、ミネアポリス産メロディックブラックメタルバンドの2ndアルバム。
今作からスペイン人のハープ奏者Vicente La Camera Mariño氏が正式メンバーとして参加したことで、中世ヨーロッパ、ルネッサンス音楽色が強くなっている。1stからあったプログレッシヴさと、ギターソロかのようにメロディックな進行を残しつつ、ハープを挟むことで神秘的かつ美しい世界観を築き上げている。ハープソロがイントロに入る曲もあれば、疾走するドラムパートが入る曲もあり、緩急が付けられていて飽きることなく最後まで聴ける。Opethの「Still Life」が好きな方は気に入るはずだ。
Obsequiae - Autumnal Pyre (2015) - YouTube
18. Cohol「裏現」
[Japan, Black Metal/Post-Hardcore]
日本産ブラックメタルバンドの2ndアルバム。
本作はフランスのOsmose Productionsからのリリースとなったが、同レーベルのブラックメタルバンドに負けじとブラックメタルをしている。高速ブラストなドラミングにギターのノイズがかったトレモロサウンドが重なり合い、その上には死、病気などをテーマにした日本語詞の絶叫ヴォーカルが被さり合う。ジャケットにある樹海の寒々しい雰囲気を見事に表現している。ハードコアの要素も含んでいるため、ブラックメタルファン以外にも楽しめる作品だと思う。
COHOL / 「地に堕ちる -Depressive-」from 2nd. album [ 裏現 - Rigen- ] - YouTube
17. Heliostrope「Configuration EP」
[Japan, Emo/Post-Hardcore]
愛知県産激情ハードコアバンドの1st EP。
名古屋ではこれまで見たことがなかったenvyタイプの激情ハードコアバンド。横浜のheliotropeではありません。ポストロック的な音にポエトリーを乗せつつ、溜めに溜めて激情パートへ入った時のカタルシスは凄まじい。激情パートは少なく、ライブで盛り上がるという感じでもないが、自分たちの世界観に観客を引きずり込む演奏を見せてくれる。本作はEPだけど、これからの期待も込めてランキングに入れました。
Heliostrope 星を詠む人 Full Ver from Configuration EP. - YouTube
16. So Hideous「Laurestine」
[US, Post-Black Metal/Post-Hardcore]
アメリカ、ニューヨーク産ポストブラックメタルバンドの2ndアルバム。
So Hideous, My Loveのバンド名で活動していた時の作品しか聴いてなかったので驚いたが、シンセを導入していて、シンフォニックな仕上がりになっている。そのため、静から動への転換は、劇的かつ壮大に表現されている。特に#7の後半はまるでオーケストラのクライマックスかのような盛り上がりを見せる。疾走するパートはほぼ無く、激しさが少し薄れてしまったものの、新しいポストハードコアの一面を見せてくれた作品だと思う。
So Hideous - A Faint Whisper - YouTube
15. malegoat「Here and There」
[Japan, Emo/Rock]
八王子産エモーショナルロックバンドの2ndアルバム。
Husking Beeのベーシストが居ることでも知られるバンド。90'sエモのリヴァイヴァルとして名前を挙げられるが、その枠には収まらず良い意味で今風に再構築している。アルバム全編に渡って聴けるアルペジオを多用したメロディックなギターは、歪み具合も良く気持よく聴ける。英語のヴォーカルも曲に合っていて良い。ミドルテンポな曲が多いが、1曲辺り約3分と短めなことと、ギターのメロディーが好きで飽きずに聴ける。早くライブが見たいバンドの1つ。
MALEGOAT - Here and There | STIFF SLACK
[Japan, Idol/Rock/Punk]
東京アンダーグラウンド産2人組アイドルの1stアルバム。
新宿LOFTを中心に活動をしており、Have A Nice Day!やNATURE DANGER GANGといったアンダーグラウンドなバンドとも交流がある。曲は90'sのUSインディーロックに影響を受けているような音で、#3や#4は良い意味で音質が悪い。#5「note」以降は少し落ち着いた曲調になるが、同じ曲でも音源とライブで全く雰囲気が変わるのも魅力の1つだと思う。メンバーも見た目通り個性が強く、面白いキャラクター性を持っているのもこのグループの魅力だと思う。
2015.05.10 おやすみホログラム / note @綱島ラジウム温泉 東京園 - YouTube
13. GOMESS「し」
[Japan, HipHop]
自閉症のラッパーによる2ndアルバム。
GOMESSを知ったのは、Maison book girlと共演をした時だったと思う。ラップ系の音楽を好んで聴くことは無かったが、心臓に突き刺さるかのような自身の経験を元にしたリリックと、その表現力に衝撃を受けた。韻の踏み方とか、その言葉がどうだとか細かいことはわからないけど、ポエトリーリーディングに近い歌い方は好きだ。ライブだと声質や見た目では想像できない熱い想いをフリースタイルでラップをすることもあり、それを見るたびに胸を打たれる。昔のライムベリーに曲提供をしていたE TICKET PRODUCTION、Maison book girlのプロデューサーであるサクライケンタも曲提供をしている。
12. ACO「Valentine」
[Japan, Pop/Rock]
日本の女性シンガーソングライターによる10thアルバム。
ACOと言えば、Dragon Ashの「Grateful Days」や、toeの「月、欠け」しか知らず、アルバムを聴くのは今作が初めて。少しハスキーで透明感のあるACOさんの歌声が心地よい。ポストロック、シューゲイザー、ジャズなどの要素も少しずつ取り込み、自身の歌を上手く盛り付けしている。今作もtoeの柏倉隆史がドラムを叩いているが、ドラムはtoeの新作よりも今作の方が楽しめた。
ACO "未成年" (Official Music Video) - YouTube
11. Ringo Deathstarr「Pure Mood」
[US, Shoegaze/Rock]
アメリカ、オースティン産シューゲイザーバンドの4thアルバム。
前作よりグランジ色が強くなった印象があり、特に#2「Heavy Metal Suicide」はヘヴィーメタルとまでは行かないけど、激しい音になっている。シューゲイザーの甘いノイズとアレックスの歌声は相性が良く、今作も心地良く聴ける。今作を引っさげての来日公演は、OAにMaison book girlが就いた東名阪の計3回を見に行ったが、ライブをする度にどちらのグループも良いライブをするようになっていて、素晴らしいツアーでした。
Ringo Deathstarr- 3 Stare At The Sun - YouTube
10. Hauptharmonie「Hauptharmonie」
[Japan, Idol/Rock]
TOKYO BOOTLEG主宰のO-antがプロデュースするアイドルの1stアルバム。
プロデューサーが幅広く音楽に精通していることもあり、スカ、エモ、シューゲイザー、ジャズなど多彩なジャンルの曲を持つアイドルグループ。ENTHRALLS、fifiといったバンドのメンバーが作曲しているものもある。#14「Caterwaul」はテクニカルデスメタルバンドCryptopsyネタも隠されている。個人的に好きな曲は#8「瞬きのsummer end」で、Death Cab For CutieのようなUSインディーロックをアイドルが歌っている。名曲揃いだが、ベストアルバム的な印象がある点が惜しい。このアルバムを聴けば、好きな曲が1つは見つかると思う。
Love likes a mille-feuille (from ハウプトハルモニーファーストアルバム『Hauptharmonie』) - YouTube
9. envy「Atheist's Cornea」
[Japan, Post-Hardcore/Emo]
日本産激情ハードコアバンドの7thアルバム。
前作ではハードコア要素が薄れてポストロック寄りに落ち着いていたが、今作は初期envyを彷彿させるかのような激しいパートが戻ってきている。ただ激しいだけでなく、前作で表現したポストロック的な手法を融合させることで、静から動へのドラマティックな展開を見せてくれる。ヴォーカルは激情な絶叫と優しく諭すような歌い方の対比、日本語詞のポエトリーと表現の幅が広く、聴き手に訴えてくるものがある。20年の集大成と呼ぶに相応しい作品だ。
Envy - Footsteps in the Distance - YouTube
8. Shizune「Le Voyageur Imprudent」
[Italy, Emo/Hardcore]
イタリア産激情ハードコアバンドの1stアルバム。
イタリアの激情系と言えばRaeinの名前がまず挙がるが、その影響は随所に感じられる。2分前後の曲に手数の多いドラムが畳み掛け、時には哀愁漂うギターのメロディを挟みながらヴォーカルが叫び倒す。先日の来日公演(名古屋)を見て、Touché Amoréのような訴えかける歌い方とその激情さに胸を打たれた。基本イタリア語詞で歌われるが、#6の間奏に日本語詞のポエトリーが挟まれている。これはヴォーカルによるもので、なんでも日本語はプレイステーションの「FINAL FANTASY」で勉強したとか。
Shizune - Notes of Decay - YouTube
7. Tigran Hamasyan「Mockroot」
[Armenia, Jazz/Piano]
アルメニアのジャズピアニストによる2ndアルバム。
ジャズコーナーで試聴して度肝を抜かれた作品。ピアノをベースとしているが、変拍子、転調が多く、プログレ好きも楽しめる。アルメニアの伝統的な曲も入っており、辺境感も出ている。ピアノはもちろんのこと、ドラムの手数の多さとリズムの刻み方は圧巻。激しい曲が多いけど、動と静のメリハリの付け方はポストハードコアとはまた違った良さがある。ジャズはあまり聴けてないジャンルだけど、こういう作品が出てくるのは面白いと思うし、掘っていきたい。
Tigran Hamasyan - Entertain Me - YouTube
6. 溶けない名前「タイムマシンがこわれるまえに」
[Japan, Shoegaze/Rock]
名古屋産シューゲイザーバンドの1stアルバム。
これまで2枚のEPをリリースし、メンバーチェンジを経て、1stアルバムのリリースとなった。「歌謡シューゲイザー」と呼ばれるその音は、シューゲイザーに、ポップかつどこか怪しげな雰囲気のある女性ボーカルとキーボードを足したところにあると思う。ジャケットには制服を着た少女が居て、「恍惚教室」「感じる計算機、二十一歳」というタイトル群、男女ツインボーカルで歌われるところに思春期を思い起こされる。アルバムでは落ち着いた演奏をしている印象はあるが、ライヴだとアグレッシヴで全然印象が違うのも面白い。
溶けない名前 少女の官能基(Official Music Video) - YouTube
5. Deafheaven「New Bermuda」
[US, Post-Black Metal/Post-Hardcore]
アメリカ、サンフランシスコ産ポストブラックメタルバンドの3rdアルバム。
新たなポストブラックメタル/ハードコアを提示した1stアルバム、シューゲイザー特有の甘くてノイズがかったメロディーを取り込んでメタル界隈を震撼させた2ndアルバム。そして今作でまさかこう来るとは!という驚きが隠せません。1stへの原点回帰ではあるけれども、2ndで見せたシューゲイザーなパートはもちろんのこと、プログレッシヴかつソリッドなリフを刻むギター、さらにはギターソロまで取り入れている。新作を出す度に物議を醸し出しているが、必ず高評価が付くのも納得の出来。
Deafheaven - "Brought to the Water" (Full Album Stream) - YouTube
4. Bosse-de-Nage「All Fours」
[US, Post-Black Metal/Post-Hardcore]
アメリカ、サンフランシスコ産ポストブラックメタルバンドの4thアルバム。
2012年にDeafheavenとスプリットをリリースして以来の作品となる今作は、ポストブラックメタルからポストハードコア化し、Deafheavenの影響を受けているかのような音になっている。絶叫するヴォーカル、これでもかと手数とブラストで攻めてくるドラム、トレモロでメロディックなギター進行が絡み合うハーモニーは圧巻。ひたすら激しいだけでなく、緩急の付け方もワンパターンでなく素晴らしい。Deafheavenの新作と合わせて聴いてもらいたい1枚。
Bosse-de-Nage - A Subtle Change - YouTube
3. レミ街「フ ェ ネ ス テ ィ カ」
[Japan, Electronica/Folk/Rock]
名古屋産ロックバンドの3rdアルバム。
エレクトロニカ、フォーク、チェンバーなどを中心に様々なジャンルを取り入れ、オーケストラとのライブもするなど、活動の幅が広いバンド。アコースティックギターとピアノをベースに、曲によってはホーンセクションやストリングスも取り入れ、そこに柔らかく透き通った女性ヴォーカルの歌声が重なり合って癒やしを生み出している。パーカッションも柔らかい音が出るような楽器選択をされていてる。癒やしが欲しいけど、ヒーリングミュージックでは物足りない方に聴いてもらいたい1枚。
レミ街 Remigai - "CATCH" Official Music Video (2015) - YouTube
2. Maison book girl「bath room」
[Japan, Idol/New Age/Pop]
東京を中心に活動している4人組アイドルの1stアルバム。
プロデューサーであるサクライケンタが作詞、作曲を手掛け、現代音楽とポップスを組み合わせた「現音ポップ」と呼ばれる楽曲をアイドルが歌っている。ex-BiSのコショージメグミ(推し)を中心に普段は緩い雰囲気のメンバーが集まっているが、ステージ上では唯一無二の世界観を表現している。3〜7拍子の曲をこの1枚で網羅しているが、変拍子も違和感なく聴くことができる。サクライが一番好きと公言しているSteve Reichのような手拍子で始まり、最後はポエトリーリーディングで終わるという構成も上手い。今年57回ライブを見て、応援しながらその成長を見れたことは嬉しく思うし、引き続き見ていきたい。
maison book girl / snow irony / MV - YouTube
1. bacho「最高新記憶」
[Japan, Emo/Rock]
兵庫県姫路産ロックバンドの1stアルバム。
活動13年目にして初のフルアルバム。やってる音楽はずっと変わりなく、30歳を過ぎても男臭い青春を歌い続けるその姿がカッコ良い。日々の生活を見返した上でそれでもなお夢を追い続ける、ド直球のストレートで脳内にガツン!と飛び込んでくる熱い言葉たち。ライブで見れば、拳を上げて一緒に歌いたくなる。それがbachoだ。bachoはハードコアでなくても感情を込めてエモーショナルに演奏し歌い合うことを教えてくれた。#6ではピアノを使ってバラードを歌っているが、bachoらしさは失われていない。音楽は魔法ではないけれど、背中を押してくれる。これから頑張りたい人に聴いてもらいたい1枚。
--------------------------総括-----------------------------
この記事を書く前に読ませてもらったRotten Appleさんの記事が興味深く、オールジャンルで書いてみました。上位3作は順位が付けにくかったため、今年よく聴いた順番です。
今年は2位に挙げたMaison book girlのライブを見に行くことを優先していたため、新しくバンドを掘るということはほとんどできなかった。おかげでアイドルを見る機会は多く、その辺のバンドより面白い音楽をやってるアイドルもいて、まだまだ面白いジャンルだと思いました。
今年リリースの作品で、比べて聴くと面白い作品は、ACOとtoe、DeafheavenとBosse-de-Nageです。どちらかを気に入ったら両方聴き比べて欲しいです。
新しいことと言えば、今年の頭にジャズにハマり始めて、名盤の安いBOXセットを買って聴いてます。来年は新作にも手を出していきたいなと思います。
来年も引き続きアイドルは見ていきたいと思うものの、最近はバンド熱もまた戻ってきているので、バランスよく聴いていきたいです。